糖尿病とは、糖尿病の原因・症状・診断・予防について
糖尿病とは
糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高い状態が続く疾患で、インスリン(血糖を下げるホルモン)の作用不足により引き起こされます。主に1型糖尿病(自己免疫や特発性が原因)と2型糖尿病(生活習慣との関連が強い)に分類されます。
※インスリン:膵臓のβ細胞で作られる、血糖値を下げる唯一のホルモンです。インスリンは血液中のブドウ糖(血糖)を細胞に取り込み、エネルギーとして利用できるようにする働きがあります。インスリンの作用が不足(インスリン分泌量、インスリン抵抗性)すると、血糖値が上昇し、高血糖の状態になります。
※膵臓の老化や肥満などによってインスリン分泌能力が低下すると、インスリンが分泌するタイミングが遅くなり、細胞がブドウ糖を取り込むことができず、血糖値の急激な上昇を招きます(食後高血糖:血糖値スパイク)。
血糖値スパイクの特徴として、食後の強い眠気や疲労感、集中力の低下やイライラ、めまい、動悸、頭痛、 食後に空腹感を強く感じるなどがあります。ひどくなると気絶、意識障害を起こすこともあります。また血糖値スパイクにより糖尿病発症リスクが高まります。
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糖尿病の原因・症状
- 糖尿病の原因
- ・食生活の乱れ ・運動不足 ・遺伝的要因 ・加齢やストレス ・自己免疫異常(1型)など
- 糖尿病の症状
- ・口渇(のどが渇く) ・多飲・多尿(尿の量が増える、トイレが近い、1時間に1回以上、夜間頻尿)・尿が泡立つ ・体重減少(食べても痩せる、食べても体重が減る) ・倦怠感(疲れやすさ・疲労感)・手足の痺れ(寝起きの手足の痺れ)・足がつる(夜中に足がつる、こむらがえり)・手足の冷え・目のかすみ・皮膚の痒み・乾燥肌
糖尿病の診断
糖尿病の診断は、1回の検査結果だけでは確定せず、原則として同一の検査を別の日に再検査し、いずれも基準を満たすことで糖尿病と診断されます。ただし、多飲・多尿・体重減少などの典型的な症状があり、随時血糖値が200mg/dL以上の場合などは、1回の検査結果で診断が確定することもあります。
- 空腹時血糖値での診断
- ・空腹時血糖値≧126mg/dL
- 食事2時間血糖値(OGTT2時間値)での診断
- ・食事2時間血糖値(OGTT2時間値)≧200mg/dL
- 随時血糖値での診断
- ・随時血糖値≧200mg/dL
- HbA1cでの診断
- ・HbA1c≧6.5%
※HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)とは、直近1~2ヶ月の平均血糖値を反映する指標
HbA1cとは、血液中のヘモグロビンに結合したブドウ糖の割合を示します。
HbA1cの正常値は通常4.6%〜6.2%とされています。
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血糖値・ HbA1c |
| 空腹時血糖値 |
≧126mg/dL |
| 食事2時間血糖値 |
≧200mg/dL |
※OGTT(経口ブドウ糖負荷試験)を行うことで血糖値スパイクの診断が可能です。血糖値スパイクの特徴として、食後の強い眠気や疲労感、集中力の低下やイライラ、めまい、動悸、頭痛、 食後に空腹感を強く感じるなどがあります。ひどくなると気絶、意識障害を起こすこともあります。また血糖値スパイクにより糖尿病発症リスクが高まります。
| 随時血糖値 |
≧200mg/dL |
| HbA1c |
≧6.5% |
※高血糖
血液中のブドウ糖(グルコース)濃度が正常範囲よりも高くなっている状態を指します。
血糖の正常値は、空腹時で70~100mg/dL、食後で140mg/dL未満です。
高血糖は糖尿病の主な症状の一つで放置すると網膜症、腎症、神経障害などの糖尿病合併症(しめじ)を引き起こします。
高血糖は、食事や運動習慣、遺伝的要因など様々な要因によって引き起こります。
食事で血糖を下げるには、食物繊維を豊富に含む食品を優先的に摂取し、糖質の吸収を緩やかにすることで血糖値の上昇を抑えることができます。
運動で血糖を下げるには、有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせることで、より効果的に血糖値を下げることができます。
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糖尿病の治療
糖尿病の治療は、食事療法、運動療法、薬物療法の3本柱があり、高すぎる血糖値を正常域まで低下させ、合併症を防ぐことを目的としています。
糖尿病の食事療法
食べてはいけないものはありませんが、自分に合った分量で、バランスのとれた食事にする必要があります。食事療法は糖尿病治療の基本となるものです。
糖尿病の運動療法
運動療法は食事療法と並んで重要な治療になります。筋肉を減らさず脂肪を減らし、健康的な体質改善をするとともに、カロリーを消費する事で直接的に血糖を下げることが重要です。また、運動によりインスリンの働きが良くなるといったメリットもあります。しかし、急な激しい運動は、病状によっては合併症を悪化させる場合もあるため、医師の判断による運動処方が必要です。
糖尿病の薬物療法
薬物療法には、飲み薬(経口血糖降下薬)による治療とインスリン・GLP-1受容体作動薬の自己注射療法の二つがあります。 使用薬剤の選択は、個人個人の体質や合併症の程度にあわせて千差万別です。
- SU薬(スルホニル尿素薬)
- ・主な作用:インスリン分泌促進 特徴:低血糖リスクあり
- ・主な薬剤一般名:グリメピリド・グリクラジド等
(製品名:アマリール錠・グリミクロン錠等)
- α-GI(α-グルコシダーゼ阻害薬)
- ・主な作用:糖吸収遅延 特徴:食後高血糖抑制
- ・主な薬剤一般名:ミグリトール・ボグリボース等
(製品名:セイブル錠・ベイスンOD錠等)
- ビグアナイド薬
- ・主な作用:糖新生抑制 特徴:体重増加少
- ・主な薬剤一般名:メトホルミン塩酸塩
(製品名:メトグルコ錠等)
- チアゾリジン薬
- ・主な作用:インスリン抵抗性改善 特徴:浮腫に注意
- ・主な薬剤一般名:ピオグリタゾン
(製品名:アクトス錠)
- DPP-4阻害薬
- ・主な作用:インクレチン分解抑制 特徴:食後高血糖抑制
- ・主な薬剤一般名:シタグリプチン・アログリプチン・リナグリプチン等
(製品名:ジャヌビア錠・ネシーナ錠・トラゼンタ錠等)
- GLP-1作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬
- ・主な作用:インスリン分泌促進・食欲抑制
特徴:食後高血糖抑制・体重減少・注射・経口薬あり
- ・主な薬剤一般名:デュラグルチド等
(製品名:ウゴービ皮下注・トルリシティ皮下注等)
- SGLT2阻害薬
- ・主な作用:糖排泄促進 特徴:体重減少、心腎保護効果
- ・主な薬剤一般名:ダパグリフロジン・エンパグリフロジン等
(製品名:フォシーガ錠・ジャディアンス錠等)
- インスリン
- ・主な作用:血糖直接低下 特徴:注射製剤
・1型糖尿病にはインスリン療法が必須です。
必要に応じてSAPやインスリンポンプも使用する
※SAP:リアルタイムCGMを併用したインスリンポンプ療法
- ・超速効型インスリン
特徴:インスリン追加分泌(食後高血糖)用として立ち上がりが早い
作用発現時間:10~20分
最大作用時間:30分~1時間30分あるいは1~3時間
作用持続時間:3~5時間
注射タイミング:食直前
主な薬剤一般名:インスリン アスパルト・インスリン リスプロ等
(製品名:フィアスプ注・ノボラピッド注・ルムジェブ注等)
画像提供:ノボノルディスクファーマ株式会社
- ・速効型インスリン
特徴:インスリン追加分泌(食後高血糖)用、超速効型インスリンより立ち上がりは遅い
作用発現時間:30分~1時間
最大作用時間:1~3時間
作用持続時間:5~8時間
注射タイミング:食前30分
主な薬剤一般名:生合成ヒト中性インスリン・ヒトインスリン等
(製品名:ノボリンR注・ヒューマリンR注等)
- ・持効型溶解インスリン
特徴:インスリン基礎分泌用、作用持続時間は約24時間であり最大作用時間に明らかなピークはない
作用発現時間:1~2時間
最大作用時間:明らかなピークはない
作用持続時間:約24時間
注射タイミング:通常1日1回、毎日同じ時間(※アウィクリ注は1週間に1回、同じ曜日)
主な薬剤一般名:インスリン イコデク・インスリン デグルデク・インスリン グラルギン等
(製品名:アウィクリ注・トレシーバ注・ランタス注等)
■アウィクリ注(インスリンイコデク):アウィクリ注(インスリンイコデク)は世界初の週1回インスリン製剤です(週1回持効型溶解インスリンアナログ注射)。
アウィクリ注(インスリンイコデク)の半減期は約1週間で長時間血糖降下作用が持続します。アウィクリ注(インスリンイコデク)は可逆的にアルブミンと結合しますが、緩徐にアルブミンから解離しインスリン受容体と結合して作用しますので、血糖降下作用が1週間にわたって持続します。
アウィクリ注ゆっくりと長期間にわたって作用するため、週1回インスリン投与で持続した効果が期待されます。 アウィクリ注は毎週1回同じ曜日に皮下注射します。
画像提供:ノボノルディスクファーマ株式会社
■トレシーバ注(インスリン デグルデク):トレシーバ注(インスリン デグルデク)は、1日1回の注射で26時間(海外では42時間)血糖降下が持続する持効型溶解インスリンアナログ製剤です。
トレシーバ注(インスリン デグルデク)を1日1回同じタイミングで注射することで、安定した血糖コントロール(基礎インスリンの補充)に貢献します。夜間の低血糖リスクを軽減することも期待できます。
画像提供:ノボノルディスクファーマ株式会社
- ・中間型インスリン
特徴:速効型インスリンにプロタミンを添加して結晶化させ、作用時間を長くさせたインスリン
作用発現時間:30分~3時間
最大作用時間:2~12時間
作用持続時間:18~24時間
注射タイミング:朝食前30分以内
主な薬剤一般名:生合成ヒトイソフェンインスリン・ヒトイソフェンインスリン等
(製品名:ノボリンN注・ヒューマリンN注等)
- ・混合型インスリン
特徴:インスリンの追加分泌を補う超速効型あるいは速効型製剤に一定量のプロタミンを加えたもの、あるいは中間型を組み合わせた製剤
作用持続時間:15~24時間
主な薬剤一般名:二相性プロタミン結晶性インスリンアスパルト・生合成ヒト二相性イソフェンインスリン等
(製品名:ノボラピッド30ミックス注・ノボリン30R注等)
- ・配合溶解インスリン
特徴:超速効型インスリンと持効型溶解インスリンを混合した製剤
作用発現時間:10~20分(Bolus画分)
最大作用時間:1~3時間(Bolus画分)
作用持続時間:>42時間(Basal画分)
注射タイミング:1日1回投与は毎日一定、1日2回投与は朝食直前と夕食直前
主な薬剤一般名:インスリン デグルデク/インスリン アスパルト
(製品名:ライゾデグ配合注)
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糖尿病の血糖自己測定(SMBG・CGM)
自己血糖測定(SMBG:Self Monitoring of Blood Glucose)は、自宅で手軽に血糖値をチェックできるため、生活管理(医師の指示のもと食前、食後、運動前後や就寝前など、1日の血糖値の変動を把握する)や治療見直しに役立ちます。
CGM (Continuous Glucose Monitoring)は、血糖値を継続的に測定できる血糖測定器です。皮膚にCGMセンサーを装着して、24時間365日、リアルタイムで血糖値の変動を把握することができます。この情報を用いて、食事や運動、インスリン注射、GLP-1注射、血糖降下薬(糖尿病の飲み薬)などの効果を分析し、生活管理や治療見直しに役立ちます。
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・Dexcom G7(デクスコムG7):Dexcom G7(デクスコムG7)の持続グルコースモニタリング技術(Dexcom CGM システム、リアルタイム CGM (RT-CGM)システム)は、Bluetooth を介して、ウェアラブル センサーから近くのモニターまたは互換性のあるモバイル機器に定期的にグルコース測定値を送信します。Dexcom G7(デクスコムG7:Dexcom CGM)は、スキャンを行わずに、過去および現在のグルコース値やグルコースの変化速度などの血糖変動情報を計測、送信します。
画像提供:Dexcom社
糖尿病の予防・治療の日常生活での注意点
バランスのとれた食事 ・運動習慣(ウォーキングなど) ・薬の飲み忘れ防止 ・ストレス管理、禁煙、定期的な健康診断を行う。
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当院での取り組み(糖尿病の予防・治療)
白岩内科医院では、複数の日本糖尿病学会認定糖尿病専門医や指導医が、糖尿病に関する診療全般を包括的に担っています。さらに、国立病院機構大阪医療センターの加藤研医師が、1型糖尿病専門外来のために先進医療外来を担当し、先進的な治療にも対応しています。
また、管理栄養士、理学療法士、薬剤師、看護師などの多職種が連携し、食事指導や運動療法、フットケア、薬物管理など、患者さん一人ひとりに応じたサポートを継続的に提供しています。
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引用・参考文献
下記ホームページも併せてご参照ください。
詳しい情報や最新情報などを閲覧することができます。
日本糖尿病学会 編. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂
American Diabetes Association. Standards of Medical Care in Diabetes—2024. Diabetes Care
糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告 (国際標準化対応版) (「J-STAGE」へ)
「糖尿病」 Vol.55 (2012) No.7 p.485-504
厚生労働省. 糖尿病対策の現状と課題(2023年度報告書)
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糖尿病に関連する用語集
血糖値スパイク:炭水化物を多く含む食事を摂取することで食後の血糖値が急上昇した後に急降下する状態。血糖値スパイクの特徴として、食後の強い眠気や疲労感、集中力の低下やイライラ、めまい、動悸、頭痛、 食後に空腹感を強く感じるなどがあります。ひどくなると気絶、意識障害を起こすこともあります。また血糖値スパイクにより糖尿病発症リスクが高まります。血糖値スパイクを抑えるために食事の順番を変えたり・運動をしたり、GI値(グリセミックインデックス値)の低い食品を選んだりすることが重要です。
‐GI値が高い食べ物:白米、食パン、うどん、パスタ、ジャガイモ、ニンジン、チョコレート、ドーナツ、クッキー
‐GI値が低い食べ物:玄米、ライ麦パン、日本そば、キノコ類、海藻類、大豆食品
納豆などの大豆製品は血糖値スパイクを抑える効果があると言われています。納豆や大豆(枝豆)には食物繊維やイソフラボン、納豆菌など、血糖値の変動を穏やかにする働きがある成分が豊富に含まれているためです。
食べても痩せる、食べても体重が減る:糖尿病が悪化するとインスリンが必要量分泌されなかったり、インスリンの抵抗性(インスリンに反応しない)が生じて、食事から摂取する糖分(糖質・炭水化物)をエネルギーとして利用できなくなり(血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれない)、体脂肪や筋肉が分解されて体重が減少します。
糖尿病足がつる、こむら返り:糖尿病が進行すると糖尿病性神経障害になり血流が悪化して末梢神経の働きが悪くなり、足がつる、足のしびれや、こむら返り、足の痛みが現れ感覚や運動神経に障害が出ます。また、高血糖状態が続くと血管が傷つき、足の末端部分の血流が悪くなって筋肉への酸素供給が不足し、筋肉の収縮が異常が起こり足がつりやすくなります。
頻尿(尿の量が増える、トイレが近い、夜間頻尿、1時間に1回トイレに行く):高血糖状態が続くと、腎臓は血液中の糖分を尿に排泄しようとします。この際、糖分と水分が一緒に排出されるため、尿の量(トイレの回数)が増えます。また頻尿とは1日に8回以上トイレに行くことをいいます。
GLP-1受容体作動薬:インスリン分泌を促進し血糖値を下げるだけでなく、食欲抑制やグルカゴン抑制作用などにより体重の減少も期待できます。
GIP:グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド。インクレチンと呼ばれる小腸K細胞から分泌されるホルモンで、血糖値を調整する働きがあります。
GLP-1:グルカゴン様ペプチド-1。インクレチンと呼ばれる小腸L細胞から分泌されるホルモンで、インスリンの分泌を促進す、グルカゴンの分泌を調整することで食欲を抑制する。
ウゴービ:GLP-1受容体作動薬の肥満症治療薬(注射薬)で、週1回皮下に注射し投与します。 0.25mgから0.5mg、1.0mg、1.7mg 、2.4mgまでの5段階の用量があります。
BMI:BMI(Body Mass Index):体重(kg)を身長(m)の二乗で割った値で、肥満度や低体重(やせ)を判断する際に用いられる指標。
普通体重:BMI 18.5以上25未満
肥満:BMI 25以上
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